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小さい家を建て、犬を飼いたいと思った矢先、人間ドッグで「要精密検査」の判定をもらった。
それまでは、血液検査でもすべてがA (良好)が自慢だった。

なにかの間違いと気にもせず、職場で義務付けられた再検査をうけに少し大きな病院にいった。
思いもしなかった再検査結果。

「がんセンター」に転院し、再び精密検査を行った。
悪性であることを前提とした検査がはじまった。

友人から
「きっと、悪性じゃないよ」
「今のガンは治るから」
と言われても、とりあえず笑顔を作りお礼を言いながらも、
「元気なひとに何がわかるの」
とか、
「勝手にガンって決め付けないで」
とか素直に受け取れず、心の中は複雑だった。

場所がよくなかったため、「死」についてまじめに考えた。
残された時間を考えた。やり残したことをしようと。
でも、先に死ぬかもしれないのに 犬は飼えない。
親を看取らずに先に逝くこと以外、遣り残したことは特になかった。
やりたいことやってきた。
「やればよかったと後悔するなら、やって失敗した後悔の方がいい」
との母親の育て方のおかげかもしれない。
運動も勉強も趣味も遊びも 全部が中途半端だけど、そこそこがんばったし、いい思い出も苦い思いでもたくさんある。いろいろな世界をのぞいてきた。やりたいことはやった。

「普通に過ごそう」
そう思えた。

検査に検査がつづいたあるとき、
「悪性の確率はきわめて少ないと判断しましょう。
これからは、今度は良性であることの確認の検査にかえましょう」
と言われた。

「私は命拾いした。犬を飼おう。たったひとつの命だけだけど、命拾いする犬を迎えよう」
いい結果を聞く数日前に黒い犬が夢にでてきた。
あの黒い大型犬を探そうと思った。
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いろいろな保護施設と接触した。

対応はさまざま。里親を希望したら、
私が仕事をもっているのに無責任だと責めるところもあった。
人間の子育ても犬育ても 親が働いているから いいこが育たないというのはおかしいと私は思っている。
そばにべったりいることがすべてではない。

いろいろな団体なりに 個性が違った。
一生懸命取り組んでいるグループもあれば、
犬には罪はない。
けど、
「何か勘違いしてない?」
眉をしかめたくなる団体もあった。

黒ラブ2歳、チョコラブ4歳、黒ラブMIX6ヶ月と話があったが、私と会うまでに里親がみつかったり、私が里親として認められなかったり、縁がなかった。

ある日、黒い大型犬がいると連絡を受けた。
写真を送ってもらったら、すでに大きくなったドーベルマンだった。
「ラブじゃないんですか?」
「ラブはね、けっこう、里親がみつかるんですよ。ドーベルマンはマニアックな人が飼うでしょ。そういう人は子犬から自分好みに仕上げたいみたいだし。成犬だしね。素人は怖がるでしょ。でもこのこはとても大人しい性格ですよ」
と施設の人は話していた。

とりあえず、面会に行くことにした。

会った瞬間、顔をつき合わせて、牙を向いて、つばを撒き散らし、「ガウガウ」ほえられた。
「おとなしい???私には無理だ。」
これが第一印象。
しばらくして吠えやんだ。そっと手の匂いをかがせてみた。
第一関門 突破。
少し、リードをもって散歩もどきをしてみた。
がんがん引っ張って、うれしそうに草の匂いをかいでいた。

「連れて帰って」
施設の人が言った。
「今日は会うだけのつもりできたんで・・・」
「気に入ったでしょ。連れて帰って」
「なにも準備してませんし・・・」
「首輪とリード、そのまま 持ってかえっていいから」
「手入れは楽やで。ときどき、ママレモンで洗ったらええ。手間なしや。
言うこと聞かんかったら、洗面器投げつけたらええらしい。気に入ったら、早い方がいい。
連れて帰って。ウチは里親の資格やなんやらってうるさいこと言わんから。
ただ、飼ってみて無理でもココにはもう連れこんといてな。
ネットにだしたら、里親みつかるから」

たくさんの犬が次々はいってくるから、機会を逃したくないのかもしれない。
つながれ、ボーっと何をみてるのか何もみていないのか視点の定まらないドーベルがかわいそうになった。
施設は安住の地じゃないね。

「一緒に私のおうちにいく?」
犬にきいた。
その犬はぴょんと車の座席にのった。

バリケンもない、2ドアのクーペ。
どんな犬かもわからない。運転中、噛まれたら・・・少し不安もあった。でも乗ってしまった。連れて帰るしかない。

「ちょっと 待って~。血統書あるねん、こいつの。置いていかれても捨てるだけや。まあ、邪魔にはならんから持ってって。でも、前の飼い主さがしたりせんといてな」

と血統書をいただいた。

犬舎もご飯皿もなにも準備なしに ドーベルマンが家にやってきた。
牡 2歳 25kg やせ気味。下痢、軟便を繰り返していた。

健康診断がてら、近所の獣医さんに連れて行った。
フィラリア陰性。
血液検査も異常なし。虫もいない。

病院でもおとなしくいいこだった。
「いい里子をもらわれましたね。環境になれたら、おなかは治ってくるでしょう」
と言われた。

施設で教えられたもともとの名前を呼びかけてもなんの反応もない。
もし、嫌な思い出の名前なら変えようと決めた。
かしこくなってほしい。
Clever ではなくWise の賢さがいいなと ワイズ となづけた。

呼べども呼べども 視線があうことはなかった。
「ワ~イズ♪」
と顔を近づけると180度後ろを向き、拒否された。
おやつで釣っても、私の顔を見ることを拒否した。

家ではお利口だった。
借りてきたネコのように おとなしかった。
ほえることもない。
いたずらもしない。要求もしない。
なんで、こんないい子が施設にいたんだろうって正直驚いた。

ただ、散歩ではひっぱりまくった。
私のリードをもつ手と、踏ん張る足の指に水ぶくれができた。
それでも毎日2回、戦いながら散歩にいった。
散歩のときに出会う人、出会う犬、ワイズはまったく反応しなかった。
飛び掛るように吠えてくる犬にも
ワイズは相手をすることなく、通り過ぎてくれた。

夜は夫が帰る時間に駅に迎えにいった。
行き来する人にも反応することはなかった。
きれいな姿で駅に座るワイズが自慢だった。

今 思うと、ワイズを迎えて2週間足らず。
ワイズのことは何もわかっていなかった。
苦手なこと、嫌いなもの。気をつけねばならぬこと。
知らない過去がたくさんあることに気がついていなかった。

あるとき、小学生の女の子がゆっくりゆっくり歩いてきて、ワイズの前から、突然、走り出した。
ワイズが反応して、女の子の手首を噛んだ。
リードは手に握っていたが、あまりにも近かった。

私の知らないワイズの一面を見た。
噛んだといっても怒って噛んだというものではなく、
捕まえようとして、歯をあてた程度だった。
しかし、歯を当てたとか、怒って噛んでないとか、
そんなことは関係ない。
他人さまの皮膚に傷がついたことは事実。
とにかく、謝りつづけるしかなかった。

犬を飼っている家であれば、許してもらえそうな傷に思えたが、
そうはいかなかった。
夫に対して責任追及を強く行ってきた。
何度もお菓子をもって、女の子に家にお詫びに行った。
保険にははいっていたが、あまり役に立たなかった。

夫は面倒なことに巻き込んだワイズのことを厄介者だとあまり好きではなくなった。

半年後、ようやく示談が成立した。
散歩があまりにもつらかったので、ある訓練所の門をたたいた。

訓練士さんはワイズを立たせ、縦横斜めから、見て「いいですね」といった。

訓練士さんがリードを持つと、全くひっぱらす、きちんと脚側について歩いた。
ただ、お座りができなかった。
訓練士さんはいろいろ試していた。

「ショーマナーがはいっていますよ。あと招呼。ダンベルには反応しませんね」
「ショーにはもう出さないのですか?本当に停座を教えるのですか?」

と本当にショーに出さないのかということを 10回以上繰り返しきかれた。
ショーがなにかも知らない私は
「日常生活に困らない犬にしたい」
ことを繰り返し答えた。
その1日だけで、ワイズは散歩でもほとんどひっぱらなくなった。

しかし、相変わらず、呼んでも来ることもなく、私を見ることもなかった。
毎日、毎日、寝る前にワイズを抱きしめた。

「死ぬまで一緒だよ。おじいちゃんになっても家族だよ。
世界中が敵になってもワイズを守るからね。だから、私を信じて」

迷惑そうに体をかわずワイズが少しずつ、もたれてくるようになっていった。

2ヶ月が過ぎた頃、私が出かけるときにワイズは泣き叫ぶようになった。
玄関の鍵を回す音でスイッチがはいり、吠え叫びはじめた。

「分離不安」
いぬのしつけの本に書かれていることはすべてやった。
朝、家をでて、徒歩約4分。最寄の駅のホームで電車を待っていると、泣き叫ぶワイズの声がひびいていた。
ご近所情報ではワイズは私が出かけた後、疲れ果てるまで吠え、その後、昼寝するらしい。
かなり、長い時間吠えているようだった。

ご近所にお詫びに回った。
「なんとか、がんばってしつけるので、少し時間をください」
とお願いして回った。
幸運にもご近所は暖かいお返事をくれる家ばかりだった。
隣のおばあちゃんは
「ワイズが吠えてくれるので、猫が庭でウンチをしなくなった
ありがたい」
と言ってくださった。

あるとき震災グッズにもらった、ラジオ&ライト&サイレン をいじくっているとき、たまたまサイレンが鳴ってしまった。
そのサイレンの音にワイズが固まった。
ためしに、朝、出かけるときにワイズが吠えた瞬間、そのサイレンを鳴らしてみた。
ワイズは固まり、吠えるのをやめた。
静かになったワイズに、柵の隙間からジャーキーを食べさせた。

その1回で、ワイズは出かけるときに吠えなくなった。
ただ、私が出かけるのにあわせて、庭に穴を掘るようになった。

庭に穴があいても、ご近所には迷惑はかからない。
まあいいっかと
気にしないようにした。

ワイズが叫びまくったひと月あまり、そして穴を掘りまくった、さらにひと月あまり。
「昼寝をして待っていれば、帰ってくる」
と理解したのか、いつのまにか ワイズはお留守番が得意になっていた。
3ヶ月ほど経ち、それなりに家になじんできたころ、いたずらをするようになってきた。
ワイズが、最初に楽しいと思ったのは 人の靴下を脱がすこと。
それをきっかけに どんどんいたずらをはじめた。

でも、ウチの最低限のルールは守ってもらわなきゃいけない。
日々、「いけない!」「いけない!」を繰り返すようになった。

物をとりあげようとすれば 歯をあてにきた。
興奮状態になり、静かにさせようとして手を伸ばすと噛まれた。
半そでを着るのが躊躇されるほど、腕はあざだらけだった。

公園で出会った人や犬とは仲良くできた。
ただ、気に入った人であるほど、
「じゃあね。バイバイ」
と別れの言葉を口にされるとスイッチが入ってパニックに陥った。
空中をパクパク噛む。
バイバイを言った人を噛んだら大変だと制止すると私が噛まれた。
毎日傷が絶えなかった。

「いけない」「いけない」といたずらを次から次にするワイズに大声で繰り返していたら、
ある日、ワイズがぶちきれた。

「いけない いけないって うるさいんじゃ!!!!」
って。

顔をしわくちゃにして 異様な三角の目をして 歯茎をだして飛び掛ろうとしてきた。
あまりにも怖くて私は逃げた。
ドアをバンってしめて、ワイズが落ち着くのをまった。
機嫌がなおったころ、部屋にもどり、静かになったワイズに安堵した。

でも、逃げるわけにはいかない。
次は戦おうと腹をくくった。

数日後、そのときはやってきた。
私の「いけない」の言葉にまたぶちきれた。

左手を噛みにきた。噛まれることは覚悟していた。無我夢中だった。
右手で首輪と首を一緒につかんで持ち上げた。片手でワイズが持ち上がった。

「なんでそんなこというの!どういうつもりなん!そんなこというのウチのコちゃう!」

なんて言って叱ったらいいのかわからず、大声で怒鳴りながら、右手で持ち上げたワイズを振り回し、床に押さえつけた。
押さえつけたまま
「いくらかわいいワイズくんでもネ、私に逆らうことは許せへん。よー 覚えとき」
って静かに言って、庭に出し、入れてくれというワイズを無視した。

それから、大きく私に歯向かうことはなくなった。

こんな大変なことがあったときにも相談する相手がいなかった。

夫にも言えなかった。
ワイズのことをよく思っていない夫にはどうしても言えなかった。
「ほれみてみぃ」と言われたくなかった。

以前 少し通った訓練所には 行っていなかった。
個別レッスンではなかったので足が遠のいていた。
ひとりで向き合うしかなかった。
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